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レイド・タイ挑戦記

挑戦者: 奥平 力(オクヒラツトム)
レース: 第15回レイド・タイ
期間: 2007年11月15日〜22日(レースは17〜21の5日間)
開催場所: タイ北部のチェンマイ近郊

レイド・タイへの参加動機

しばらくランニングをサボったことで体重が3kg以上も増えてしまった・・・。
「血液型以外はオールAだよ。」毎年毎年、健康診断の結果を同僚に自慢する私であるが、このままではメタボになってしまう・・、減量しなければ・・・。
切羽詰らないと何もしない性格なので、すぐに参加可能なレースを検索した。トレッキングの好きな私にとって山岳地方でのレイド・タイはとても興味深く、自らの走力を顧みることなく即エントリーしてしまった。

開催地チェンマイへ(11月15日)

鹿児島−福岡−バンコク−チェンマイと乗り継ぎ、東京から参加の佐野さんと合流、チェンマイ空港ではタイ人スタッフのチャイレーが笑顔で迎えてくれた。10時間以上の旅であったが、他の参加者(フランス、オランダ、イタリア他)から見ればニッポンとタイは同じアジア、隣国みたいなものかもしれない。

主催者と合流、レース前日(11月16日)

ロビーにて佐野さんと二人で不安そうに本隊の到着を待っていると、スキンヘッドの大男がにこやかに声をかけてくれた。チェンマイ在住のメディカルスタッフのデニスだ。カタコトの英語で本隊到着が遅れている状況を説明し、近くのショップでコーヒーをおごってくれた。とても優しいイイ男だ。
やがて本隊が到着、レースについてのブリーフィングが始まった。フランス語は全く分からないがフランス人達は陽気で笑いが絶えなかった。親切な男が不安そうな日本人に英語で説明してくれたので概要は理解できた。銀行員で名前はクリスチャンだと言った。
午後にはレース地の山村へ移動、夕食時には医師のピエールとクレアがフランス語の分からない我々にいろいろ世話をやいてくれるのでビールを楽しむことができた。 この日から3日間はテント泊だ。周りに灯りがないため満天の星、いつもより低い位置に北斗七星を見つけた。

レイド・タイ:レース1日目 距離23km、高低差120m(11月17日)

遠くに美しい山々を見ながら林道のコースを26名のランナーが朝9時にスタートした。徐々に日差しが強くなり大汗をかいたので、ケイレン予防のため塩やスポーツドリンクを所望したが、そんなものは無いという。コーラ、ファンタ、水とバナナだけだ。「塩分不足は痙攣を引き起こす。」という考えはフランス人には通用しないらしく、彼らは塩分を補給することなく炎天下をビュンビュン走っていく。日和見ランナーの私には20km以上の炎天下の走行はキツかったが、「ジャポネ!アッリー!(日本人がんばれ)」の声援のおかげで何とか完走した。ゴール後、吐き気がして昼食も取らずに休んでいるとデニスがマッサージをしてくれた。おかげで夕食時には回復、レセプションでは子供たちの民族芸能を楽しみ、女性ランナーのクリスチャン夫人の誕生日を祝うこともできた。

レイド・タイ:レース2日目 距離22km、高低差826m(11月18日)

早朝はミスティーで涼しかったが、レース開始の8時半には晴天となりジワジワと暑くなった。
容赦ない登り坂が続き、大腿四頭筋がピクピクしだしたのでペースを落として顔見知りの95kg巨漢と併走した。「もし体重別のレースであれば重量級では私が一番だ。」と彼が大声で笑った。
第2チェックを過ぎると山道も下りとなったが大腿筋がケイレン寸前で、せっかくの景色を楽しむ余裕はなかった。点在する牛のフンやバイクに踏み潰された大きなムカデ等を避けてコケないように急坂を下り、やっとのことでゴールした。
レース後の昼食はメディカルスタッフと供にした。自己紹介したが、お互いに名前を覚えることが出来ないのでフランス流のニックネームを付けてもらった。私が「トト」、佐野さんが何故か「モモ」、ナースの二人は「チチ」と「キキ」だ。お互いのニックネームを呼び合って皆で大笑いだ。 
この日も夕食後にはレセプションがあった。夜空に吸い込まれていく灯りのバルーンが印象的だった。

レイド・タイ:レース3日目 距離27km、高低差668m(11月19日)

早朝5時30分、真っ暗闇の中のスタートであるが足元は舗装されおり、この日のレースを乗り切ればあとは快適なホテル泊なのでランナー達は張り切っていた。次第に夜が明けると川沿いの未舗装路を上流に向かって象のフンを避けながら走っていた。しばらく前走する巨漢ランナー達についていったが、やはり急坂で置いていかれた。 坂道は体重の軽い方が有利のはずなのに・・、下りになっても巨体に追いつけず結局27kmを4時間もかかってゴールした。
ホテルへと向かう車中ではオランダ人ヘンリーが顔と肘と膝に大きなすり傷をこさえていた。よく見ると隣のショーンコネリー似の男は左足の親指が潰れて真っ赤に腫れている・・、95Kg巨漢も手に怪我をしていた。みんな必死のトレールランニングだったのだ。ケイレンを恐れてあまりにも消極的になっていた自分の走りが少し恥ずかしくなった。

レイド・タイ:レース4日目 距離23km、高低差317m(11月20日)

疲労のため昨夜からノドに痛みがあったが、この日はアグレッシブに走ろうと決めていた。
いきなり苦手の登り坂であったが、すぐにフラットになった。また曇り空にも助けられてライバルの95kg巨漢やノルマンディーの大男を抜き去ることができた。先行する中級ランナーグループには追いつけなかったが2時間45分、この日だけは自分なりの走りができた。
夕食時にはノドの痛みも消えてチェンマイの町でタイ風しゃぶしゃぶとタイ式マッサージで疲れた身体を癒した。

レイド・タイ:レース5日目 距離22km、高低差1030m(11月21日)

最終日は雨中のスタートとなった。3kmほど湖沿いの舗装路を軽快に走ると高低差1030mの山道に突入し、ほとんど歩きとなった。先行していたマウンテンバイク達も喘いでいる。こんな急坂を、こんなとんでもない悪路を走るなんて・・・ホントにワイルドな人達だ。ぐちゃぐちゃの悪路に足をとられて何度も転倒しそうになるが、ここまで来てリタイヤはしたくないものだ。登りは続き、水量の増した滝を眺め、第2チェックを過ぎるとやっと下りだ。雨上がりの涼風の中、最後の5kmだけは景色を楽しみながら走ることができた。ずぶぬれで泥だらけのゴールをランナー、ウォーカー、スタッフ、民族衣装の少女・・・みんなが祝福してくれた。合計で16時間48分(26人中20位)、悪戦苦闘のゴールに小さなガッツ・ポーズが出た。

レイド・タイ:レースを終えて

日頃不摂生の54歳サラリーマンにとって5日連続のトレールランは過酷を極めたが、終わってしまえば楽しい日々でした。毎日顔を合わせるので、フランス人もオランダ人もイタリア人もタイ人も、ランナーもウォーカーもスタッフも、皆が一体となり本当に楽しい1週間を過ごすことができました。
炎天下にスポーツドリンクも無く、悪路と急坂ばかりのワイルドなコースに、誰もが楽しむように果敢にチャレンジした・・・。これまでフツーの舗装路でのマラソンしか経験のない私でしたが、今回のレイド・タイ完走により以前より少しだけワイルドなオヤジになれた気がした。(チョイワイルドオヤジ?)

レイド・タイ 全員の集合写真レイド・タイ:佐野さん(23)と私(20)


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