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サハラマラソン挑戦記
挑戦者: 秋吉妙子
レース: 第34回サハラマラソン(モロッコ)
期間: 2019年4月5日~15日 7日間6ステージ走行距離合計:250Km
成績: 総合順位672位 合計タイム:55時間07分41秒 (女性120位)
日本人ランナー:26名(内棄権1名)

川畑道子ランナー川畑道子ランナー

Youは何しにサハラへ?

第34回サハラ砂漠マラソン、日本人参加27名、内、女性4名、日本人女子の中で初参加は私のみ。17回目、7回目、2回目出場女王達のお陰でミラクル楽しい大会になった。何回参加しても、あぁ同じということはないそうで、共に苦しみ、悩み、怒り、笑い、喜んでくれた。

初めての私は、砂漠って、暑いのかな?ステージレースって大変なのかな?そんな漠然としたイメージだけで臨んだサハラマラソン。

モロッコって、遠い!パリからチャーター機で3時間、モロッコ ワルザザード到着。お天気だけど意外に風が冷たい、あれ?ひょっとして寒い?入国に何故か2時間。ようやく空港から出てバスで6~7時間の移動。途中、止まったのでふと窓からトイレする男性を目の当たりにしてショックが隠しきれなかった。ランチタイムで皆外にでていたのだ。あぁ、これから屋外でのテント生活が始まるのだと思い知らされた。すっかり夜になりビバーク到着。バイキングの夕食は11時近かったと思う。ビール、ワイン、コーラから一つ選べたが移動の疲労と寒さで美味しく飲めなかった。翌日は午前と午後に分かれてメディカルチェック&荷物預け。ゼッケンの速いメンバーは午前中だった。預けた荷物に手袋やちょっとしたものを入れてしまったという声が。荷物の仕分けは慎重に行わないとちょっと残念な気持ちになる。

ビバークでの時間

朝5時、まだ暗いうちからよくわからない音楽で目が覚め、起き抜けのまま前日から水で戻していたマジックライスをかきこむ。走る格好で寝ているから、着替えはなく、寝袋たたんで荷物を詰め直し、トイレ、装備整える。美しいベルベル人がテントをたたんでいく。一息ついているベルベル人と微笑んで見つめ合うよう指示され、女性プレスの人に撮られた。9時にはスタート。

走り終えて夕方ゴールとともに熱い甘くて美味しい紅茶を頂き、750mlボトル水4本とプーバッグ(トイレバッグ)担ぎながらビバークにたどり着く。ゴールする仲間達を迎えつつ夕食の準備(インスタントラーメンに水を入れてふやかすだけ)しつつ、洗顔、足のメンテナンス、翌日の準備(コース確認)を済ませる。ベルベル人がテントの様子を見て、風向きによってテントを調整してくれる。7時過ぎに陽は落ち、就寝。

1日目の夕方にスタッフからメールを届けられた。まさか自分に来るとは思っていなかったので、自分のゼッケン番号が見えた瞬間、緊張の糸が切れてしまった。涙が止まらなかった。ビバークでのゴールから就寝までの数時間、慌ただしいけれど、そんな感動もビバークでの一コマだったし、貴重な時間だった。

懸念事項だったトイレ。テントメイトの先輩方にならい、基本、青空トイレ。ちゃんと3つ並んだトイレが設置されているが、朝は少し離れた草の茂み、砂山でトイレして、拭いたティッシュをプーバッグに入れて設置されたトイレそばのゴミ箱に捨てた。音のない世界、広い空の下でのトイレは、自然だなぁ、好きな人とのキスぐらいナチュラルだなぁと思った。

テント生活では疲労ですぐ眠ってしまい、あまり気にしていなかったが、帰国してお尻がひどい床ずれだった。テントは厚手の毛布が敷いてあったが、場所によって石がゴロゴロしていた。いいツボ押しとあまり気にしていなかった。寝袋のみだったが、膨らませるタイプのマットあれば良かったと後悔した。

食料は、主食にサタケのマジックライス、サッポロ一番塩ラーメン、ジャガリコ、仁丹の食養生カレー、行動食にカロリーメイト、補助としてドライフルーツ数種、削り節、クエン酸(500mlの水に溶かす)だった。チューブの練り梅をごはんのアクセントにして飽きなかった。ラーメンは、3日目くらいに匂いがだめになってしまい、あげてしまった。じゃがりこも飽きてしまったが、若い方が大喜びだった。カロリーメイトは飯野航から歯溶けが良いと言われていたせいか、飽きずに食べられガス欠することはなかった。

コースの印象

Stage1

緊張と荷物の重さでガッチガチ。石ゴロゴロ、砂場の道で走るどころか、歩くのもやっと。一生懸命走っているのに、ストック使って悠々歩く外国人にどんどん追い越される。途中、go pro(動画撮影)で仲間がYouは何しにサハラへ?とインタビューしてきた。あれ?なんでこんなところに来てしまったのだろう?何も考えられないくらい足を進めていくだけで精一杯だった。村を通ると、こども達が手を出してマダム、ウン ガトーと言ってくる。日本人とわかって、アリガトウと言っているのか、私がかぶっているドラえもんの帽子を見てネコ(スペイン語でgato)と言っているのかわからない。答える余裕もなく、ただいらだつ。11時、風がピタっと止む。汗が出てきて、意識を失いそうになった。カロリーメイト食べてゆっくり歩くと落ち着いた。3時前にゴール。

Stage2

常連女王達も懸念していたメルズーガ砂丘13km。配給される水も3L。覚悟はしていたものの全く前に進めない。砂嵐を予感させる強風にすぐ止まってしまう。歩き方がおかしいのか、後退さえしてしまう。追い越していく男の子に上手く歩けないと言ったら、人が歩いた後を歩くと良いとアドバイスを頂き、しばらくその男の子の後を追わせてもらった。すぐにその男の子にも追いつけず、よちよち歩きながらなんとかゴール

Stage3

テントメイトも疲労を極め、口数が少なくなってきた。いつもより距離が少し長いという印象以外コースのことを思い出せない。翌日からのオーバーナイトステージで頭がいっぱいだった。

Stage4

いよいよ76.3kmオーバーナイトステージ。足は疲労を極め、スタートから走り出すことができない。歩く速度も落ち、後から追いついてきた仲間に心配される。メルズーガ砂丘でお世話になったS君の後ろをまたついていく。S君は足のマメと爪剥がれに悩まされていた。砂漠に沈む夕陽を眺めたり、鼻血を止めるために道ばたでゴロっと横になり星空を仰いだりした。陽が落ちた暗闇でヘッドライト点けても何故かトンネルの中にいるような圧迫感で息ができない。目印の明かりもうまく見えない。砂と石に足をとられ、ひたすらS君の足下を凝視するしかできなかった。CP5にたどり着いたのが午前2時。S君の足の痛み止めが効くのを待つために仮眠をとることにした。30分くらいのつもりが2時間眠ってしまった。寝ている敷き毛布が風でめくれ上がるくらいの強風だったが、寝袋にくるまっての眠りは本当に安らかで気持ち良かった。4時にCP5を出発、CP6、ゴール目指す。陽がさしてくると余裕が出てきていろいろ話をした。朝日に照らされて川が見えた!え?砂漠に川?!キレイに澄んだ水が流れている。CP6過ぎるとトップの選手達だろうか?もう朝のトレーニングで走っている。もう少しでゴールだからがんばれ!と応援してくれる。元気すぎるし素敵な笑顔だった。ゴール後はみな洗濯三昧。ご褒美のコーラで乾杯した。

Stage5

レース最後。荷物も大分軽くなり、前日しっかり休んだおかげで走り出せた。ヒモをつたっていかないと登れないjebel el oftal。腕とザック、前と後ろの外国人に持ち上げてもらわないと足をかけられない場面も。途中意識を失いそうになる。あ、高所恐怖症だったと怖くなる。登ったからには下りが。下りは岩盤が続く。ほぼほぼお尻をついて下るしかない。フラットなCP2までなんとか走った。気持ち良かった。最後まで続く砂山、足を捻挫してしまったM君とゴール。アーティストの生演奏があった。大好きな曲をいくつも歌ってくれた。音楽にのって踊りながら、仲間のゴールを待つ。夕暮れに並ぶいくつものジープのライト、西部警察の撮影か?旗を翻しながら最後のランナーとして片山さんがゴールしてきた。やっとゴールしたのに、インタビューと撮影の嵐、皆で栄光を讃え合った。

Stage6

チャリティーステージ6.1km。日本人女子、女子トークで盛り上がりながらゆっくり歩く。男性陣は丘の上で写真撮影ではしゃいでいた。素晴らしい岩肌の山を眺めながら、名残惜しく女子だけでゴールした。

最後に

Youは何しにサハラへ?その問いにまだ答えていない。サハラで何か変わったのか?それもわからない。本当にサハラ走ったの?と聞かれることも。これから時間を重ねることでふと気づくのか?わからなくてまたサハラに答えを見つけに行くのかな?

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